「お手紙有りがたく頂戴いたしました。拝見すると、目の前の霧は晴れていくような気がいたしました。
また天台の経典をお送りくださいまして、有りがたく身の置き所も無いほどうれしく存じました。
もう、寒さを感じる頃となりましたがそちら様は如何おすごしでしょうか。
私は格別変わりも無く無事でおります。
あなた様のお誘いにより比叡の峰(最澄)にお伺いしたいとは思ってはおりますが、つまらぬ用で出かけることが出来ずにおります。
いま、私とそちら様と室生の師(修円)と共に集まり仏法の大事についてお話ををし、共に新しい教えを広め御仏の恩徳に報いる所存でおります。
願わくばご面倒をいとわず私の寺までお越しください。どうぞどうぞ重ねてお願い申し上げます。」
空海書 風信帖 (清雅堂版)
「既に冷なり、、、」
毎年九月になると風信帖を臨書します。
風信雲書、、、から始まるあの有名な風信帖は、3通からなる空海の最澄への手紙です。
有名といえば有名すぎるくらいの物ですが、
梅原猛先生は、、、、
「その手紙の中には世界がある。ひどく強健な書体があるかと思えばひどく艶麗な書体がある。
空海の字はやはり一つの宇宙ではないかと思う。
それは宇宙のリズムの表現であろう。山あり、海あり、空あり、地あり、世界が彼であり、彼が世界である。」参考 中央出版社 「書道芸術 空海」
と、言っている。
私は梅原先生の如く確たる世界観はありませんが、とても心惹かれます。
繊細で麗しく、涼やかで馥郁と匂い立つものが感じられ、 一方行間から汲み取れる精神性の高さは、言うまでもなく、、、数ある書の中でも別格!
初心の方でも入りやすく、でも求めれば求めるほど奥深く、書き手の覚悟と清い心が必要?のような気がします。
一度取り組んでみては如何でしょうか?
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