「どれがお好きですか?」
五点の半切条幅が掛けられていました。
「左から二番目?」 「あたしも、、、」
偶然二人の答えは同じでした。実は私もそれが一番!と、思っていました。
時々好みを聞いてみますーーー上手下手ではなく好きなものは誰でも答えられます。
五点の作品は皆それぞれに書体も書風も勿論題材も全く違うもので、それを比較するのはかなり難題です。
その中で二人共に同じ作品を選んだのです。
わたしはそれがとても嬉しくて二人に感謝したい気持ちでした。
実は書かれたのは今年卒寿を迎えられたM先生、大大大先輩です。
御年九十にしてまだ筆を持つ事が出来、あまつさえ条幅をかくことも出来るのです。なんと素晴らしい事か!
「どうして?何処の辺が良いと思いましたか?」質問は続きます。
(なんとなく、、、、ではなく、何処かポイントを、、、)
「なんと言うか、欲が無いような、、、爽やかな、、、」
「無欲のような気がします」
無欲、、、とても難しいことです。
卒寿まで御自分に厳しく生きて来られた先生は、教育者であり、大書家であり、漢学者。
人格高潔で清貧の人。
その先生が書かれた書は、何も知らぬ人に無欲である事を感じさせ、その無欲が実は書き手の本質である事を教えてくれる、、、
書に言葉は要らない、、、と、思っています。
書かれたものに力があれば充分に語ってくれるハズ、、、
命を懸けて励んで来られた先生の無欲の書は、後塵を拝する我々に書の何たるかを示してくださったような気がします。
後に続く者にはとても高いハードルです。
いかようになりますことやら、、、あと++十年後?
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